経済安保法案(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案)は、4月7日に衆議院本会議で可決され(共産、れいわは反対)、4月13日からは参議院で審議中です。政府は4月中または5月の連休明けに法案成立を図ろうとしています。この法案は骨組みと罰則だけを決め、具体的内容は法案成立後に1つの基本方針、4つの基本的事項、138件の政省令で決めるという白紙委任となっています。一見して分かりにくい法案となっており、まだ多くの人々にこの法案の危険性が知られていません。
ロシアによるウクライナへの侵略戦争を受けて、半導体などの部品の入手が困難になっています。このような戦時ムードの中で、特定重要物資や特定社会基盤(基幹インフラ)を安定供給するため、関係事業者から設備や設備投資にかかわる事業計画書等を事前に提出させる法案となっています。特定国からの輸出入を規制したり、備蓄を指示したりすることで、従来からの自由貿易主義、国際協調主義、国際的商習慣が破壊され、保護貿易主義となり、国際的な緊張を高める危険性があります。しかも、特定重要物資が何であるのかが示されておらず、政府が状況に応じて決めることとなっており、事業者への不安や負担が大きくなっています。時には政府からの大きな支援が得られ、企業が国家に忖度し、管理・統制に縛られる危険性があります。特定社会基盤には電気、ガス、石油、水道、電気通信、放送、郵便、金融、クレジットカード、鉄道、貨物自動車運送、外航貨物、航空、空港など14業種が指定されています。関係する事業者の規模は大企業だけとされていますが、サイバー攻撃などは中小企業も狙われ、大企業に波及する例はいくらでもあります。営業の秘密やノウハウなどが国家によって把握され、経営の非効率化を生じ、国家による管理・統制が強まることが予想されます。
特定重要技術の開発にはプロジェクトごとに協議会が設置され、政府が研究開発から実用化の段階まで伴走支援します。それが特定重要技術(例:宇宙、海洋、量子、AI、バイオ、サイバーセキュリティなど)の場合には罰則付きの守秘義務が課せられ、プロジェクトからの離脱が困難となるでしょう。ユネスコの「科学及び科学研究者に関する勧告」にある「軍民両用に当たる場合には、科学研究者は、良心に従って当該事業から身を引く権利を有し、並びにこれらの懸念について自由に意見を表明し、及び報告する権利及び責任を有する」にどう対処するのかも不明です。
特許出願の非公開制度の導入が狙われています。これは、平和憲法になじまないとして廃止された戦前の秘密特許制度の復活といえ、秘密保護法とあいまって、研究の自由、研究発表の自由を侵害するものです。
このように経済安保法案は、企業ばかりでなく科学者・技術者を罰則を伴った守秘義務で囲い込み、軍事力増強に動員させる軍事立法と言うべき法案です。平和憲法とは矛盾する法案であり、廃案とするべきです。
コメント